九段坂三番町

　わしが仕事を一時中断し、会場出口に戻ったとき、雨により大発生したタクシー待ちの行列はさらに長くなっていた。倒れそうになった。

　そこから、4回ばかりタクシーを捕まえたものの、行き先を告げたとたん「遠いからダメ」とNG連発。そ、そんなに遠いのか。

　結局、同じ地区で、別のホテルに宿泊しているという人と知り合い、彼らのホテルを経由して、20時過ぎに宿に戻れた。つーか、拾ってくれたタクシーの運ちゃん、ほんまにありがとう。めちゃめちゃ陽気なおっちゃんで、わしのヘタクソな英語に良いリアクションを返してくれて、精神的には持ち直すことができた。肉体的には、足にきていたが。

　しかし、ふっかけてきたタクシーを断ったことを悔やむ結果になるとは……。

　雨のニューオリンズ。そんな歌があったようななかったような。つーか、かなり強い雨に見舞われており、わしが訪れているイベント会場では、タクシーを求める人々だらけ。晴れていたときは、周辺ホテルと連絡するバスを利用する傾向にあったと思われるが、今日ばかりはタクシー利用者が激増。

　わしが宿泊するホテルは、会場からおよそ6マイル。10kmくらいか。とても歩いていけないし、シャトルバスも出ていない。足になるのはタクシーくらい。一応、公共交通はあるらしいが、一度も使ってないので勝手がわからん。従って、タクシーしか使わないのだ。

　で、さきほどホテルへ戻ろうとしてタクシーをゲット。やったぜよくやったわし、と思いながら運ちゃんに行き先を告げると、なんか渋ってやがる。どないしたんだ、と聞いてみれば、普段より10ドルほどふっかけられた値段でならOKと言われた。いや、そりゃカンベンしろよ高いよと訴えたが、タクシー利用者が多くて仕方ないとの返事。ま、近場への運行なら往復しやすいもんな。稼げるよな。

　「もう少し後の時間なら、普段通りの価格でいけるかもよ」と申し訳なさげに言ってくれたおっちゃん。二度と会うことはなかろうが、ま、素直に値段教えてくれてありがとう。

　そして会場に戻り、仕事するわしであった。